角膜・結膜疾患|メガネ・コンタクトレンズ

コンタクトレンズを着けて寝ることのリスク

2017.06.03
涙とコンタクトレンズ

コンタクトレンズが乗る部分である「角膜」はいったいどういう器官なのでしょう。

角膜は黒目と言われる部分で、厚みは約0.5mmのヒトの体の中で唯一透明な器官です。

角膜には血管が通っていないため血液から酸素を得る事が出来ません。
ですから眼の表面を覆っている涙から酸素を取り入れているのです。
分泌された涙はまばたきによって眼の表面に行き渡り、酸素を供給しながら角膜を保護します。

しかし眠っている時はまばたきをしないですね。
裸眼で眠っている時、しっかり眼を閉じた状態であれば、眠っている間に角膜上皮の修復がおこなわれています。無意識のうちに眼が開いた状態になる人は、眼が乾燥して角膜に傷が付く事があります。角膜は乾燥に弱いのです。

では、ソフトコンタクトレンズの素材について考えてみましょう。
ソフトコンタクトレンズに使用されている素材は色々ありますが、最近ではメーカーごとに着け心地や酸素透過性、安全性などを向上させるようにシリコーンハイドロゲルなどの新素材が増えてきました。
しかし若者たちに人気のサークルレンズ(カラコン)のほとんどは、昔から使われている酸素透過性の低く、含んでいる水分量が少ない上に、カラー(酸化鉄など)が入っています。その結果、余計に酸素を通す量はかなり少なくなります。しかも雑貨感覚の粗悪品が多いため、目にかかる負担が非常に大きく危険です。

実際にコンタクトレンズを装用している時はどのような状態なのでしょうか。
ソフトコンタクトレンズは、角膜(黒目)より大きく、ぴったりと覆っています。
眼が涙で潤っている時、まばたきによって数ミリ上下して涙の交換をしていますが、乾燥してくると動きが悪くなり、張り付いた感じになってきます。(機械的な刺激)
コンタクトレンズを装着している時は、レンズに含まれた水分や眼とレンズの間にある涙から酸素を取り込んでいます。レンズに水分を供給する役目が涙になりますが、涙が蒸発するスピードとのバランスが崩れると乾燥します。

乾燥すると角膜はレンズによってフタをされた状態になり、酸素が届きにくくなって酸欠になります。角膜とコンタクトレンズの間が潤っている事が大切です。

コンタクトレンズと涙

コンタクトレンズを着けて寝てしまった場合、まばたきが無いため乾燥してコンタクトは眼に張り付いてしまいます。

ですから、角膜は酸欠を起こしてむくみ、ダメージを受けやすい状態になってしまうのです。また寝ている間、コンタクトレンズに付いた汚れなどで雑菌が繁殖しやすい環境になるため感染症にも気を付けなければなりません。
角膜炎などで出来た小さな傷から緑膿菌やアカントアメーバなど、身近なところ(水道水など)に常在している雑菌に感染する可能性があります。不衛生なレンズケースからコンタクトレンズが汚染される場合が多く、感染すると重症化しやすく失明の危険があります。

酸欠、酸欠と繰り返し言っていますが、酸欠になると角膜にどういうことが起こると考えられるかをまとめてみましょう。
・角膜炎が起こる。
・角膜内皮細胞が減る。(一度減ると元に戻りません。減少すると角膜の透明度や視界、将来の白内障手術などに影響します。)

角膜内皮細胞比較

・血管侵入が起こる。(黒目の中に血管が入ってきます。重症化すると角膜の白濁や血管が視界を遮る視野障害や、失明の危険性があります。)
・角膜がむくみ、角膜浮腫・剥離を起こす。(視力不良、剥離になると激痛を伴い、治療に時間がかかります。)
・角膜感染症を起こす。(種類によっては特効薬が無いため、治療に時間がかかります。失明の危険性があります。)
重篤な状態になった場合、失明を免れて治癒したとしても、角膜の濁りや変形が起こり眼鏡やコンタクトレンズで従来の視力が得られなくなる事があります。

眠っている時間が長くなるほど危険性は増しますが、それほどコンタクトレンズを着けたまま寝るということは危険なのです。酸素透過性の高いレンズであっても乾くことによる張り付きや機械的刺激が起こりえます。角膜に傷が付けば感染症の危険性はあるのです。

コンタクトレンズによるトラブルはこちら

以前「連続装用可」という、決まった期間内ずっと着けたまま生活できるという認可を受けたコンタクトレンズがありましたが、現在ではほとんどなくなっています。連続装用に対するリスクがあるからでしょう。
これは商品に「認可」が下りているという事であって、誰もが大丈夫というわけではありません。涙の状態や角膜形状など個人差があり、使用によって眼にトラブルを起こす人もいました。定期的な検診を受けて、眼の状態を見ながら使用出来るかどうかを医師が判断します。

うっかり寝てしまわないようにする予防策としては、
・家に帰った時点で外す。
・コンタクトレンズを使用しない日を作る。
・いつでも外せるようにコンタクトレンズケースと眼鏡を持ち歩く。などがあります。

コンタクトレンズの種類によって性能に差はありますが、あくまでも眼にとっては異物なのでコンタクトレンズを着けている時点で眼に負担がかかっている事を覚えておきましょう。眠らないから長時間装用しても大丈夫というわけではありません。使う必要が無ければ外しておきましょう。

特にドライアイやアレルギーのある人は注意が必要です。

当然ですが、コンタクトレンズを触る前には必ず、石鹸を使って流水で手を洗いましょう。眼を守るために、正しい使用方法を守り、異常を感じたら早めに医師に相談するようにしましょう。