VDT症候群とは、V(ビジュアル)・D(ディスプレイ)・T(ターミナル)の略で、パソコンやスマートフォンなどのディスプレイを長時間使用する作業により目・身体・心に影響が出る病気です。
主に目に出る症状としては、目の疲れ・痛み・乾燥・かすみ・視力低下などがあります。
パソコンなどの近い距離を見る作業では、無意識のうちにまばたきの回数が減少します。
どのくらい減少するのかというと、近くを見る時のような集中した状態では、まばたきの回数は約1/4に減少します。1/4と聞いてもピンときませんが、人は1時間でどのくらいまばたきをしているかご存知でしょうか?
その数なんと約1,500回と言われています。これが、1/4になるとたったの375回になってしまいます。この状態が1日に何時間も継続すれば、目に異常が起こっても当然と言えるでしょう。まばたきが減少すると、当然涙の供給が悪くなり目は乾燥してしまいます。その上、パソコンを使用する環境は空調の効いた室内です。空気自体が乾燥している事や、空調の風が直接当たるなど、目の乾燥を助長する環境が多く存在します。
目が乾燥している状態が続くとドライアイや角・結膜炎、視力低下などを引き起こします。
読書や編み物など「近くを見る」という作業自体はパソコン等が普及する以前の生活にもありました。しかし、パソコン作業では眼球運動が通常の読書時の約3倍に増加するという報告もあります。それは何故かと言うと、見る対象が1ヶ所だけではなく、資料やキーボードなど、デスク周りの見たいものに向けて頻繁に視線を動かすためです。見たい対象の距離がそれぞれ異なるため、視線の移動のたびに焦点を合わせようと毛様筋が緊張を繰り返します。
画面の明るさにも問題があります。人間の目は明るさに応じて瞳孔の開きを変えて光の量を調節します。画面の明るさが頻繁に切り変わるディスプレイを見ていると瞳孔の拡大・縮小を繰り返し疲労が蓄積します。また、ディスプレイからは紫外線の次に強いとされるブルー光が発せられており、網膜や視細胞にダメージを与えるとして問題視されています。
「見る」という行為のピント調整やまばたきなどは無意識のうちにおこなわれている事が多く、まして集中している時には変化に気付きにくいものです。
このような状態が不調を引き起こします。
さらに生活環境の変化だけでなく、人は年齢を重ねるほどにピントの調節力が衰えてきます。
いわゆる老眼の状態です。近くが見えにくいと感じるようになります。
全ての人に起こる症状ですが、言葉のイメージが老化を感じさせるためか症状を認めたくない人が多くいらっしゃいます。我慢して無理をすると頭痛や肩こりなど全身的な症状が出ることがあります。
幼い頃から裸眼で目が良いと言われている人は正視か遠視の可能性が高く、特に遠視の場合は手元にピントを合わせるために近視の人よりも強い力が必要になります。つまり同じ条件で比較すると、遠視の人の方が近視の人よりも早く疲れを感じやすくなる傾向にあります。個人差や度数の違いによりますが、早い人だと20代後半くらいから疲れなどの症状を訴える場合があります。
これらのように、生活環境が変化する事によって身の回りに疲労の原因が溢れ、VDT症候群という症状が注目されてきました。
現代の生活では、パソコンやスマートフォンなどの機器は切り離し難いものになっています。今後もこの状態は増え続けてゆくでしょう。
このような環境に対処する方法として、目の緊張を和らげる眼鏡やコンタクトレンズを使用する事も効果的です。日常専用眼鏡とPC用に度数を弱くした眼鏡の使い分けが一般的ですが、使い分けが面倒という人には、1つのレンズに複数の度数が設計されて目にリラックス効果のある商品も開発されています。
なにより疲れを軽減するには、しっかりと休憩を取る事です。その時々の調子で調整するのではなく、疲れを感じる前に休憩を取れるように計画すると良いでしょう。